網膜・黄斑の治療
抗VEGF療法
こうブイイージーエフりょうほう / 硝子体注射
目の奥のむくみや
異常な血管に働きかける治療。
目の中に薬を注射し、視力の維持・改善を目指します。治療の仕組みから、注射後の過ごし方までご案内します。

※ 形・大きさ・色は説明のために簡略化しています。
抗VEGF療法とは
血管からの漏れや、異常な血管の発生に関わる物質の働きを抑えます。
網膜は、目に入った光を受け取る、目の奥の薄い膜です。その中心にある「黄斑(おうはん)」は、文字を読んだり、人の顔を見分けたりするために大切な部分です。
黄斑にむくみや出血が起こると、ものがゆがんで見えたり、中心が見えにくくなったりします。

右:薬がVEGFに結びつき、漏れを抑えるイメージ。
緑の粒=VEGF、茶色の形=薬、青=水分。分子や組織の形・大きさは実物と異なります。
「VEGF」の働きを抑える薬を
目の中に届けます
VEGFは、血管の形成や血管からの水分の漏れに関わる物質です。過剰に働くと、網膜のむくみや異常な血管の発生につながります。
抗VEGF薬を、目の中にある透明なゼリー状の組織「硝子体(しょうしたい)」に注射し、むくみや新生血管の活動を抑えて、視力の維持・改善を目指します。
図は治療の仕組みのイメージです。効果を保証するものではありません。
効果や必要な回数には、個人差があります。
傷んだ網膜がすべて元に戻る治療ではありません。目の状態を検査しながら、治療と経過観察を続けることが大切です。
どのような病気に使う治療ですか?
主に、次のような病気に伴う黄斑のむくみや、新生血管がある場合に検討します。病名だけで治療が決まるわけではありません。
滲出型(新生血管型)
加齢黄斑変性
黄斑の近くに異常な血管ができ、血液や水分が漏れ出すことで見え方に影響します。
糖尿病黄斑浮腫
糖尿病によって網膜の血管が傷み、黄斑に水分がたまってむくむ状態です。
網膜静脈閉塞症に伴う
黄斑浮腫
網膜の静脈の流れが滞り、出血や黄斑のむくみが起こることがあります。
病的近視に伴う
脈絡膜新生血管
強い近視に伴って目の奥に異常な血管ができ、出血や視力低下を起こす状態です。
対象となる病気や使える薬は、薬剤によって異なります。検査結果をもとに、医師が適応を判断します。
こんな見え方の変化があれば、診察を受けてください
- まっすぐな線がゆがむ
- 中心がぼやける・暗い
- 片目だけ見えにくい
これらの症状だけでは病気を判断できません。急に見えにくくなった場合は、通常の予約を待たず、すぐに眼科を受診してください。
抗VEGF薬には、どんな種類がありますか?
同じ「抗VEGF薬」でも、成分や対象となる病気が異なります。
薬は、病気の種類、検査結果、これまでの治療への反応、安全性や通院の負担などを考えて選びます。新しい薬や含まれる量の多い薬が、すべての方に適しているわけではありません。
この一覧は、国内で承認されている代表的な薬の説明です。
すべてを当院で使用しているという意味ではありません。当院公式サイトでは、ルセンティス・アイリーア(2mg/8mg)・バビースモをご案内しています。実際に使用する薬は診察時にご確認ください。
以下は主に成人の網膜疾患に関する説明です。適応のすべてを網羅するものではありません。「滲出型加齢黄斑変性」は、各薬の承認上は「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を指します。
ルセンティス
一般名:ラニビズマブ
VEGF-Aに結びつき、その働きを抑える薬です。異常な血管や黄斑のむくみに対して使います。
- 主な対象
- 滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視に伴う脈絡膜新生血管。
アイリーア(2mg)
一般名:アフリベルセプト
VEGF-Aなどの血管新生に関わる物質をとらえ、働きを抑えます。8mg製剤と同じ成分ですが、濃度や注射する量が異なります。
- 主な対象
- 滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視に伴う脈絡膜新生血管など。
アイリーア8mg
一般名:アフリベルセプト
2mg製剤よりも1回の投与に含まれる有効成分の量を増やした薬です。対象疾患や投与方法が異なり、2mg製剤と単純に置き換えるものではありません。
- 対象
- 滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫。
治療間隔を延ばせる場合がありますが、すべての方で長い間隔にできるわけではありません。
アイリーア8mgの患者向け説明(PDF)バビースモ
一般名:ファリシマブ
VEGF-Aに加え、血管の不安定化に関わる「Ang-2(アンジオポエチン2)」にも働きかける薬です。
- 対象
- 滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条。
ベオビュ
一般名:ブロルシズマブ
VEGF-Aに結びつく薬です。効果だけでなく、眼内の炎症や網膜の血管の炎症・閉塞などのリスクも考えて使用を判断します。
- 対象
- 滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、増殖糖尿病網膜症。
当院での採用状況は未確認です。
ベオビュの患者向け説明(PDF)「薬の種類」と「通院間隔」は、別に考えます
注射する間隔は、薬の決められた使い方を守りながら、病気の活動性や検査結果に応じて調整します。同じ薬でも患者さんによって異なります。
薬ごとの効果・副作用・費用をふまえて相談します。注射後の異常への対応は、「注射後に気をつけたいこと」をご覧ください。
治療は、検査と相談から始まります
治療の必要性や薬の種類、通院の見通しを確認してから進めます。以下は一般的な流れです。
診察・検査
視力や眼底、OCT(網膜の断面を調べる検査)などで、むくみや出血の状態を確認します。
治療方針の相談
期待できる効果、リスク、通院、費用などをご説明します。持病や内服薬もお伝えください。
麻酔・消毒・注射
点眼麻酔と消毒を行い、白目の部分から硝子体内に薬を注射します。
注射後の確認・再診
注射後の注意点を確認して帰宅します。指定された日に再診し、目の状態と治療効果を調べます。

「次の受診」が、治療の一部です
注射の間隔や回数は、病気の種類、薬、検査結果、治療への反応によって変わります。1回で終了するとは限りません。
見え方が落ち着いていても、自己判断で通院を中断せず、次の受診日を確認しましょう。
相談風景はイメージです。実際の院内・スタッフではありません。
注射後に気をつけたいこと
気になる症状を「注射の後だから」と自己判断せず、治療を受けた医療機関へ確認しましょう。
次の症状があるときは、すぐに受診してください
- 目の痛み、特に強い痛みや増してくる痛み
- 急な視力低下、かすみや見え方の悪化
- 強くなる充血・まぶしさ
- 黒い点や影が急に増える
- 光が走る、視野が欠ける・カーテンがかかる感じ
まれですが、眼内炎など、早急な処置が必要な合併症の可能性があります。症状が強くなるのを待たず、次の予約日より前でも、すぐに治療を受けた医療機関を受診してください。
診療時間外などで受診できない場合は、診療再開を待たず、眼科の救急診療に対応する医療機関を受診してください。
診療時間は公式の診療案内をご確認ください。時間外の受診先は、注射を受ける際に確認しておきましょう。
日常生活について
- 目をこすったり、強く押したりしないでください。
- 処方された点眼薬は、指示どおりに使ってください。
- 洗顔・入浴・洗髪・運動などを再開する時期は、当日の説明に従ってください。
散瞳検査や処置後は見えにくくなることがあります。見え方がかすむ間は、自動車の運転や機械の操作を避けてください。来院方法も事前にご相談ください。
知っておきたいリスク
白目の出血、異物感、目の痛み、眼圧上昇などが起こることがあります。まれに眼内炎、強い炎症、網膜剥離などの重い合併症が生じる可能性があります。薬によっては、脳卒中などの全身の副作用にも注意が必要です。
よくあるご質問
目に注射をするのは、痛くありませんか?
痛みを抑えるために点眼麻酔を使います。感じ方には個人差があり、圧迫感やしみる感じ、軽い痛みを感じることがあります。不安や痛みがあれば、遠慮なくお伝えください。
何回くらい注射が必要ですか?
病気や薬の種類、治療への反応によって異なります。初めのうちは短い間隔で注射し、その後は検査結果に応じて間隔を調整する場合があります。回数や期間を一律には決められません。
視力は元に戻りますか?
視力の維持・改善を目指す治療ですが、改善の程度には個人差があります。病気の進行や網膜の傷みの程度によっては、十分な視力改善が得られないこともあります。
費用はどのくらいかかりますか?
保険診療の適用は、病気や薬剤などの条件によって異なります。自己負担額は、使用する薬、負担割合、検査内容などによって変わります。具体的な費用や利用できる制度については、治療前にご確認ください。
ほかの治療と組み合わせることはありますか?
病気や目の状態によっては、レーザー治療などを組み合わせたり、ほかの治療を検討したりする場合があります。抗VEGF療法がすべての患者さんに適しているわけではなく、検査結果をもとに判断します。
見え方の変化や治療への不安は、
診察でご相談ください。
お一人おひとりの目の状態に合わせて、治療についてご説明します。
急な見え方の変化や注射後の異常は、通常の予約を待たず、すぐに眼科を受診してください。
予約方法・最新の診療案内は、公式サイトをご確認ください。
