白内障・多焦点眼内レンズ
神戸市東灘区 きしもと眼科 院長 岸本隼人(日本眼科学会認定 眼科専門医)
「パンオプティクス」「オデッセイ」「ビビティ」「ピュアシー」…。白内障手術のレンズを調べると、たくさんの名前が出てきます。
名前が似ていて、どれが国内で承認されたレンズなのか、費用はどう違うのか、わかりにくいという声をよくうかがいます。
この記事では、2026年10月時点で日本で使われている多焦点眼内レンズを、国の承認を受けたレンズと未承認のレンズに分けて整理します。
目次
この記事のポイント
- 国内で承認された多焦点眼内レンズは「選定療養」で使え、手術そのものは健康保険の対象です。
- 未承認のレンズは「自由診療」となり、手術・検査を含めてすべて自己負担になります。
- 「いちばん良いレンズ」は人によって違います。何を裸眼で見たいかと、夜間の見え方の許容度で選びます。
多焦点眼内レンズの3つのタイプ
多焦点眼内レンズは、光の分け方によって大きく3つに分けられます。[7]
レンズのタイプ別 ピントが合いやすい範囲
眼鏡なしで見やすい距離の目安
3焦点パンオプティクス など
連続焦点オデッセイ など
焦点深度拡張型ビビティ・ピュアシー など
単焦点(参考)保険診療のレンズ
※ 一般的な目安です。見え方には個人差があり、目の状態や明るさでも変わります。単焦点は遠くに合わせた場合の例です。
回折型(3焦点・連続焦点)
レンズ表面の細かい段差で光を遠・中・近に振り分けます。手元まで見えやすい一方、夜間に光の輪(ハロー)やにじみ(グレア)が出やすい傾向があります。
焦点深度拡張型(EDOF)
ピントの合う範囲を前後に広げる設計です。遠くから中間(パソコンや料理の距離)が得意で、光のにじみは少なめ。細かい文字には眼鏡が必要なことがあります。
屈折型・分節型
レンズの場所によって度数を変え、遠くと近くを見分ける設計です。国内では未承認のレンズに多いタイプです。
多焦点レンズで「老眼が治る」わけではありません
レンズを入れても、若い頃の水晶体のピント調節力がそのまま戻るわけではありません。[7]

国内で承認されている多焦点眼内レンズ(選定療養)
次のレンズは、国の承認(医薬品医療機器等法)を受けており、選定療養で使えます。いずれも乱視を補正するトーリック(乱視用)タイプがあります。[2]
クラレオン パンオプティクス
回折型3焦点アルコン
国内で最初に承認された3焦点レンズの後継。遠・中・近をバランスよくカバー
ビビネックス ジェメトリック/ジェメトリック プラス
回折型3焦点HOYA
国内メーカー初の多焦点レンズ。「プラス」は手元(約40cm)を強化したタイプ
クラレオン ビビティ
焦点深度拡張型(EDOF)アルコン
回折構造を使わない設計。遠方〜中間に強く、手元は眼鏡が必要なことがある
2026年10月時点の情報です。取り扱うレンズは医療機関によって異なります。特徴はメーカー資料などに基づく一般的な説明で、見え方を保証するものではありません。
販売が終了した・使われることが少なくなったレンズ
テクニス シナジー
オデッセイの前身のレンズで、2025年6月末で販売が終了しました。
テクニス シンフォニー
国内で早くから使われてきた焦点深度拡張型のレンズです。新しいレンズの登場で、選ばれる機会は減っています。
レンティス コンフォート
保険診療で使える低加入度の分節型レンズです。多焦点としての範囲は狭く、選定療養のレンズとは位置づけが異なります。[8]
国内未承認の多焦点眼内レンズ(自由診療)
海外で使われていて、日本では承認を受けていないレンズもあります。医師が個人で輸入して使うもので、自由診療で手術を行う医療機関があります。
インテンシティ
回折型5焦点Hanita Lenses(イスラエル)
5つの距離に焦点をもつ設計
レイワン ギャラクシー
らせん(スパイラル)型・非回折型Rayner(英国)
AIで設計された、らせん状の光学構造のレンズ。回折型のような段差がなく、連続した見え方と夜間の光のにじみの軽減を目指した設計。2026年に米国FDAで承認[10]
ミニウェル レディ/プロクサ
屈折型の焦点深度拡張型SIFI(イタリア)
2種類を左右で組み合わせて使う方法もある
エボルブ
屈折型の焦点深度拡張型Soleko(イタリア)
度数を個別に注文でき、強い近視や乱視にも対応しやすい
レンティス エムプラス
分節型2焦点Oculentis(ドイツ)
遠用と近用の領域を扇形に分けた設計。度数をオーダーメイドできる
未承認レンズを選ぶ前に知っておきたいこと
費用:レンズ代だけでなく、手術・検査・術後の診察まで、すべて自己負担になります。片眼で数十万円から100万円近くになることもあります。
承認審査:国内の承認審査を受けていないため、日本人での使用データや、不具合が起きたときの情報が限られます。
入れ替えや追加の処置:万一レンズの入れ替えが必要になったとき、同じレンズを用意できる医療機関が限られます。
選定療養と自由診療の違い
選定療養は、民間の医療保険の「先進医療特約」の対象外です。医療費控除は条件によって対象となる場合があります。[9]
レンズ選びで大切なのは「何を裸眼で見たいか」
レンズの新しさや種類の多さよりも、生活に合っているかどうかが大切です。たとえば次のように考えます。

夜間の運転が多い方
光のにじみが少ない焦点深度拡張型(ビビティ、ピュアシーなど)が候補になります。
読書や細かい手作業を裸眼でしたい方
手元まで見やすい3焦点・連続焦点型(パンオプティクス プロ、オデッセイなど)が候補になります。
目の病気がある方
緑内障や黄斑の病気、角膜の病気がある方は、多焦点レンズが向かないこともあります。検査で判断します。
詳しくは「多焦点眼内レンズの選び方」もご覧ください。
当院で取り扱っている多焦点眼内レンズ

当院では、国内で承認された次のレンズを選定療養で取り扱っています。
| レンズ | 通常 | 乱視用 |
|---|---|---|
| パンオプティクス プロ 3焦点 | 35万円 | 40万円 |
| パンオプティクス 3焦点 | 33万円 | 38万円 |
| オデッセイ 連続焦点 | 30万円 | 35万円 |
| ビビティ 焦点深度拡張型 | 33万円 | 38万円 |
| ピュアシー 焦点深度拡張型 | 30万円 | 35万円 |
金額は選定療養によるレンズの追加費用(税込・片眼)です。別途、保険診療分の手術費用がかかります。未承認レンズは当院では取り扱っていません。[9]
当院の白内障手術
日帰りで手術を行っています。単焦点眼内レンズ(保険診療)のほか、多焦点眼内レンズ(選定療養)も取り扱っています。手術の方法・レンズの種類・費用・手術後の生活は、白内障手術のページにまとめています。
よくあるご質問
院長からのメッセージ
多焦点眼内レンズは種類が増え、名前だけでは違いがわかりにくくなっています。インターネットで調べるほど迷ってしまう方も多いと思います。
大切なのは、レンズの名前よりも「どの距離を裸眼で見たいか」「夜間の運転をするか」といった、毎日の暮らしです。検査の結果とあわせて、一人ひとりに合うレンズを一緒に選んでいきます。白内障の診察時に、気軽にご相談ください。
きしもと眼科 院長 岸本隼人
参考資料
- きしもと眼科:パンオプティクス プロの取り扱いについて(2026年)
- 町田市民病院:多焦点眼内レンズ選定療養費(2026年5月1日〜)承認番号一覧
- @DIME:テクニス オデッセイ国内発売(2024年11月)
- ジョンソン・エンド・ジョンソン:テクニス ピュアシー発売のお知らせ(2025年5月23日)
- Eyewire News:BVI launches FineVision HP trifocal IOL in Japan(2023年6月)
- わかもと製薬:アクリバトリノバ Pro トーリック販売開始のお知らせ(2026年1月29日)
- 日本眼科学会:白内障手術
- 参天製薬:レンティス コンフォート トーリック発売のお知らせ(2020年11月)
- きしもと眼科:多焦点眼内レンズのご案内
- Eyewire News:FDA approves Rayner’s RayOne Galaxy spiral IOL platform(2026年9月)
本記事は一般的な医療情報です。レンズの承認・販売状況は変わることがあります。個々の適応は診察・検査の結果に基づき判断します。参考資料確認:2026年10月22日。

