網膜と緑内障、それぞれに合うレーザー治療

マイクロパルス治療

網膜の閾値下凝固治療眼圧を下げるMLT

マイクロパルス治療は、短いレーザー光を細かく区切って当てる治療です。照射と休止をくり返し、組織への熱の影響を抑えることを目指します。

当院では、網膜のむくみの改善を目指す治療と、緑内障の眼圧を下げることを目指す治療(MLT)に用います。目的によって、レーザーを当てる場所が異なります。目の状態に合わせて、適した治療を考えます。

照射する部位と目的が異なります検査に基づく治療選択
レーザーを当てる場所

A網膜の治療:目の奥の網膜

眼球の断面。青いAの印と線は目の奥の網膜を示します。黄斑を含む網膜の治療部位は病状により異なります。

青い印は網膜の位置です。照射する範囲は、病気や検査結果によって異なります。

BMLT:目の前方の線維柱帯

角膜と虹彩の境目にある「隅角」を拡大

目の前方の隅角を拡大。橙色のBの印と線が示す線維柱帯がMLTの照射部位です。虹彩や毛様体、水晶体を照射する治療ではありません。

橙色の印は、房水の出口にある線維柱帯です。水色の矢印は房水の流れを表します。

位置を示す模式図です。印や線は、レーザーの進路・照射範囲・大きさを表すものではありません。
網膜の治療|マイクロパルス閾値下凝固

「照射する時間」と
「休む時間」を細かく分けます。

網膜のマイクロパルス治療は、レーザーを非常に短い時間ずつ照射する方法です。照射の間に休止時間を設けることで、熱が蓄積したり、周囲へ広がったりするのを抑えます。

「閾値下(いきちか)」とは、目で見える白い凝固斑をつくらない程度の照射を目指す、という意味です。網膜を支える「網膜色素上皮」に働きかけ、黄斑のむくみなどの改善を目指します。

凝固斑が見えないことは、「作用がない」「リスクがない」という意味ではありません。出力や照射範囲は、医師が目の状態に合わせて調整します。
治療の選び方

すべてのレーザー治療に
置き換わるわけではありません。

従来の光凝固は、凝固による作用が必要な病気で大切な役割を持ちます。一方、閾値下凝固では、見える凝固斑をつくらずに治療効果を得ることを目指します。

どちらが適しているかは、病気の種類や部位、むくみの程度によって異なります。注射や他の治療を組み合わせることもあります。

網膜と網膜色素上皮の層に、短く分けた光のエネルギーが届く様子を表す概念図
図の下方の茶色い層が網膜色素上皮です。緑の点線は照射の概念で、光が空間で途切れている様子ではありません。 網膜・網膜色素上皮への照射イメージ。構造・光は模式的な表現です。
網膜の治療|対象となる病気

検査で病気と状態を確かめ、
適応を判断します。

同じ病名でも、すべての方にこの治療が適しているわけではありません。視力検査やOCT(網膜の断層撮影)などで、治療の必要性と方法を検討します。

01

糖尿病黄斑浮腫

糖尿病により、ものを見る中心の「黄斑」にむくみが生じる病気です。むくみの程度や視力に応じて、レーザーや抗VEGF療法などを選択します。

02

中心性漿液性
網脈絡膜症

網膜の下に液体がたまり、見え方がゆがむことがあります。経過観察や光線力学的療法(PDT)なども含め、経過・検査所見から判断します。

03

網膜静脈分枝閉塞症に
伴う黄斑浮腫

網膜の静脈の流れが妨げられ、黄斑がむくむことがあります。抗VEGF療法などとの関係も含め、レーザーの必要性を検討します。

治療効果について分かっていること

糖尿病黄斑浮腫の比較試験では、中心網膜厚400µm未満など、試験の条件を満たす糖尿病黄斑浮腫の方では、2年後の視力の変化が従来レーザーと同程度でした。400µmはこの試験の条件で、治療を決める一律の基準ではありません。ただし、追加の照射はやや多く必要でした。一方、慢性の中心性漿液性網脈絡膜症の試験では、半量PDTの方が網膜下の液体を解消する割合が高い結果でした。病気や重症度を越えて、同じ効果が得られるとはいえません。

根拠となる研究を見る

眼圧を下げるMLTとは、照射部位と目的が異なります。
上記は、目の奥にある網膜の治療についての説明です。緑内障に対する治療は、このページのMLTの項目をご覧ください。
網膜の治療|治療の流れ

網膜の治療は、検査と相談から。

一般的な流れです。当日の手順や所要時間は、診察時にご案内します。

検査・ご説明

視力や網膜の状態を確認し、期待できる効果、限界、他の治療法をご説明します。

点眼・準備

必要に応じて瞳を開く点眼や点眼麻酔を行い、治療用のレンズを目に当てます。

レーザー照射

医師の指示に沿って一定の方向を見ます。まぶしさや痛みがあれば、その場でお伝えください。

経過の確認

後日の診察で、視力やOCTの変化を確認します。追加照射や別の治療が必要な場合もあります。

レーザー治療に用いる機器の写真。顕微鏡、あご台、レーザー装置を備えています。
レーザー治療機器
散瞳検査・治療後は、まぶしさや見えにくさが続くことがあります。ご自身での車・バイク・自転車の運転は控え、公共交通機関などでお越しください。
網膜の治療|治療後の注意

治療後も、見え方の変化を
一緒に確かめていきます。

効果には個人差があります

治療直後に見え方が改善するとは限りません。効果が不十分な場合や、いったん落ち着いたむくみが再び現れる場合があります。自己判断で通院を中断せず、指定された診察を受けてください。

負担を抑える治療にもリスクがあります

一時的なまぶしさ、かすみ、違和感などが生じることがあります。照射条件や病状によっては網膜への影響や視力・視野の変化が起こり得るため、治療前後の確認が大切です。

このような症状は、次の予約を待たずに受診してください。

急な視力低下、強い目の痛み、急に増えた飛蚊症(黒い点など)、光が走る感じ、カーテンがかかったような見え方がある場合は、速やかに眼科を受診してください。視力低下や強い痛み、視野の影がある場合は、直ちに受診が必要です。診療時間外は、診療再開を待たず、救急対応の眼科・医療機関を受診してください。

アクセス・診療時間を確認
緑内障の治療|MLT

MLTで、房水の流れに働きかけ、
眼圧を下げることを目指します。

マイクロパルスレーザー線維柱帯形成術
MicroPulse Laser Trabeculoplasty

目の中では「房水(ぼうすい)」という透明な液体がつくられ、一定の流れで排出されています。その主な出口が、角膜と虹彩の境目にある「線維柱帯(せんいちゅうたい)」です。流れが滞ると、眼圧が高くなることがあります。

MLTは、この線維柱帯にマイクロパルスレーザーを照射し、房水の排出を促すことで眼圧を下げる治療です。短い照射と休止をくり返して、周囲への熱の影響を抑えることを目指します。

目の前方の隅角を拡大した模式図。角膜と虹彩の間の前房から、房水が線維柱帯を通り、その外側のシュレム管へ流れます。MLTは線維柱帯に照射します。
房水は、前房 → 線維柱帯 → シュレム管の順に流れます。 目の前方にある房水の出口の模式図(実際の大きさとは異なります)。緑の囲みはMLTの照射部位。矢印は房水の流れで、レーザーの進路ではありません。
目の前方・線維柱帯

緑内障のMLT

房水の出口に働きかけ、眼圧を下げることを目指します。

MLTは、白目の外側から毛様体へ照射する経強膜的なマイクロパルス治療(MP-TSCPC)とも別の治療です。

どのような方が対象?

主に、房水の出口が開いているタイプの緑内障(開放隅角緑内障)などで検討します。隅角の状態、眼圧、視野障害の程度、これまでの点眼・手術歴を確認し、適応を判断します。

治療の目的は?

眼圧を下げ、緑内障の進行を抑えることを目指します。すでに失われた視野や傷んだ視神経を、元に戻す治療ではありません。

点眼は続けますか?

点眼の継続が必要なことがあります。MLTを受ければ必ず点眼を減らせる、やめられるというものではありません。医師の指示があるまで、処方どおり続けてください。

効果には個人差があり、定期的な確認が必要です。

開放隅角緑内障の小規模な比較試験では、MLT後の眼圧低下が報告されています。ただし、十分に下がらない方もおり、研究条件や評価基準によって結果は異なります。SLTより優れている、長く効き続ける、と一律にはいえません。

効果が不十分な場合や、時間とともに効果が弱まった場合は、点眼の調整、他のレーザー、手術などを検討します。再照射が可能かどうかも、前回の反応と目の状態から判断します。何度でも同じ効果が得られるわけではありません。

MLT / FLOW & AFTERCARE

MLTの流れと、治療後の注意

一般的な流れです。検査・点眼・診察の具体的な予定は、治療時にご案内します。

適応を確認

眼圧や隅角、視神経・視野の状態を確認し、目標とする眼圧や治療方法をご相談します。

点眼・照射

点眼麻酔を行い、専用レンズを目に当てて線維柱帯へ照射します。刺激やまぶしさがあればお伝えください。

眼圧を確認

治療後は眼圧の上昇や炎症がないか確認します。必要な点眼などは医師の指示に従ってください。

効果を判定

眼圧の変化を経過で確認します。自覚症状だけで判断せず、指定された診察を受けてください。

起こり得る症状・リスク

一時的な眼圧上昇、目の炎症、充血、かすみ、痛みや違和感などが生じることがあります。組織への負担を抑える方法ですが、副作用が起こらないという意味ではありません。

治療当日の過ごし方

見え方が安定しないことがあるため、ご自身での運転は控えてください。点眼や生活上の注意は診察時の説明に従い、治療後の点眼を自己判断で中断しないでください。

強い痛みや急な見え方の悪化は、すぐに受診してください。

目の強い痛み、急な視力低下、強い充血、目の症状に伴う頭痛・吐き気がある場合は、次の予約を待たず、すぐに眼科を受診してください。診療時間外は、診療再開を待たず、救急対応の眼科・医療機関を受診してください。

アクセス・診療時間を確認
よくあるご相談

よくあるご質問

MLTとSLTは同じ治療ですか?

どちらも線維柱帯に働きかけて眼圧を下げるレーザー治療ですが、レーザーの方式や照射条件が異なります。病状、これまでの治療、期待できる効果などを踏まえて選択します。

MLT後、眼圧が下がったら点眼をやめてよいですか?

自己判断で中止しないでください。点眼を使った状態で得られた眼圧低下かもしれません。変更の必要性は、その後の眼圧や視野の経過を確認して医師が判断します。

レーザー治療に痛みはありますか?

点眼麻酔などを用いて負担を抑えますが、感じ方には個人差があります。まぶしさや刺激、痛みを感じた場合は、我慢せず医師にお知らせください。

網膜の治療は、一度で終わりますか?

一度で十分かどうかは、病気や治療後の反応によります。定期的な検査で確認し、追加照射や他の治療への変更・併用を検討します。

網膜の治療で、抗VEGF注射をやめられますか?

この治療を受ければ必ず注射が不要になる、というものではありません。レーザーと抗VEGF療法は作用が異なります。注射が必要な状態では、適切な時期に治療を継続することが大切です。

抗VEGF療法について

費用はどのくらいかかりますか?

病名、保険の適用、治療内容、自己負担割合などで異なります。検査費用を含む見込みは、治療前にお問い合わせください。

網膜剥離もこのレーザーで治せますか?

網膜裂孔や裂孔原性網膜剥離に対する光凝固・手術とは、目的が異なります。すべての網膜の病気を、この治療だけで治すことはできません。急な見え方の変化があるときは、まず診察を受けてください。

参考資料・このページについて

このページは一般的な情報であり、個別の診断・治療方針を決めるものではありません。実際の診療内容・適応・費用については、診察時にご確認ください。図はAIで作成した説明用の概念図です。

資料確認日:2026年10月6日