老眼の点眼治療とは?サンピロ点眼の効果・副作用・費用【神戸市東灘区】

老眼の点眼治療のしくみ・副作用・費用を解説するイラスト。点眼する様子と本を読む男性

老眼・手元の見えにくさ 著者:岸本 隼人(日本眼科学会認定 眼科専門医・きしもと眼科 院長)

こんにちは、神戸市東灘区のきしもと眼科・院長の岸本です。手元の文字が見えにくいときの選択肢として、老眼の点眼治療(サンピロ点眼液1%)のしくみ、海外のデータ、副作用、費用、当院での流れをまとめました。当院では、網膜の状態を点眼の前に確認するため、検査と試し点眼を必須にしています。

この記事の結論

老眼の点眼治療は、瞳孔を小さくして、手元の見え方を一時的に補う方法です。老眼そのものを治す治療ではありません。効果は数時間程度(海外製剤のデータにもとづく目安で、サンピロ1%での確かな時間は分かっていません)で、個人差があります。夜間や暗い場所では見えにくくなることがあり、まれに網膜剥離の報告もあります。当院では、検査と院内での試し点眼のうえ、副作用がなく見え方の改善を確認できた方にだけ処方します。自由診療・適応外使用です。夜間の運転には、特にご注意ください。

⚠ 自由診療・適応外使用です

老眼への使用は、国が承認した使い方ではありません。副作用が起きても、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない可能性が高い治療です。くわしくは、本文の「適応外使用について」をご覧ください。

効果の目安
数時間
個人差があります
点眼
1日1回
両眼・1本約30日分
初回の費用
3,000円
税込・自由診療
目次

🔍 老眼とは?

老眼は、加齢によって目のピント合わせの力(調節力)が落ち、近くのものが見えにくくなる状態です。病気ではなく、誰にでも起こる自然な変化です。

目の中のレンズにあたる水晶体は、年齢とともに硬くなり、厚みを変えにくくなります。そのため、近くにピントが合いにくくなります。40代前半から感じる方が増え、60代半ばごろまで進むとされています。

若い目と加齢した目の水晶体の厚みの違いを示すイメージ
左:若い目(水晶体が厚くなる) 右:加齢した目(水晶体が硬く、厚みが変わりにくい)

💧 老眼の点眼治療とは?

ピロカルピン(サンピロ点眼液1%)を点眼すると、瞳孔が小さくなります。カメラの絞りを絞ったように、ピントの合う範囲が広がります(ピンホール効果)。その結果、手元の文字が見えやすくなることがあります。

点眼前と点眼後の瞳孔の大きさと光の入り方の違いを示すイメージ図
左:点眼前(瞳孔が大きい) 右:点眼後(瞳孔が小さくなり、ピントの合う範囲が広がる) ※イメージ図です
  • 老眼そのものは治りません:手元の見え方を一時的に補う方法です。
  • 効果は数時間程度:現れ方や続く時間には個人差があります。
  • 眼鏡が不要になるとは限りません:場面によっては、眼鏡が必要です。

🧪 海外の臨床試験データ

ピロカルピンを老眼に使う点眼薬は、米国で承認されています。ただし、以下は海外の製剤の結果です。当院で使うサンピロ点眼液1%そのものの結果ではなく、濃度や添加物も違います。同じ効果をお約束するものではありません。

  • Vuity(ピロカルピン1.25%):2021年に米国FDAが承認しました。第3相試験(GEMINI 1・2)で、一部の方に手元の見え方の改善が報告されています。第3相試験は、効果と安全性を多くの人で確かめる最後の段階の試験です。
  • Qlosi(ピロカルピン0.4%):2023年に米国FDAが承認しました。第3相試験(NEAR-1・2)に600人以上が参加しています。

近くの視力が、視力表で3行以上よくなった人の割合

試験Vuityを使った人有効成分なしの点眼を使った人
GEMINI 131%8%
GEMINI 226%11%

※Vuityの30日後の結果です。対象は40〜55歳の老眼の方(2試験で計750人)です。

測定条件:点眼3時間後、薄暗い環境で測定されました。遠くの視力が1行以上落ちないことも条件でした。

結果の読み方:点眼グループでも、3行以上の改善に届かなかった方が約7割いました。プラセボは、有効成分の入っていない点眼です。

効果が続く時間:改善した人の割合がもっとも高いのは3時間後です。6時間後には差が小さくなり、8時間後にはさらに小さくなりました。副作用・リスクは、次の章に記載しています。

データの限界

  • 試験期間は短く、長期の効果と安全性はまだ十分に分かっていません。
  • 対象は主に40〜55歳で、年齢や度数の範囲が限られています。
  • 日本人を対象とした、サンピロ1%での大規模な試験結果はありません。
  • 65歳以上の方での試験データはありません。そのため、効果も安全性も、より慎重に判断します。

⚠ 副作用とリスク

比較的よくみられるもの

  • 頭痛(試験でもっとも多く報告された副作用です)
  • 結膜の充血、かすみ目
  • 眼の痛み・違和感
  • 夜間・暗い場所での見えにくさ(瞳孔が小さくなるため)
  • 緑内障用のピロカルピンは、ピントを合わせる筋肉も強く縮めるため、かすみや目の奥の痛みが強く出ることがあります。

⚠ まれだが重要なもの

網膜裂孔・網膜剥離(網膜に穴があく、または網膜がはがれる病気)が、使用開始後に症例報告されています。網膜の病気の既往がある方は、リスクが高いとされています。そのため当院では、治療の前に広角眼底写真を撮り、網膜に異常がないかを確認します。ただし、写真ですべての異常が分かるわけではありません。

サンピロ点眼液の添付文書には、眼類天疱瘡(結膜が慢性的に炎症を起こし、癒着する病気)、暗黒感、かすみ、悪心・発汗なども記載されています。長く使う場合は、結膜の状態を診察で確認します。

次の症状があれば、使用を中止して、ただちにご連絡ください。
・光が走る、黒い影や虫のようなものが飛ぶ(飛蚊症の増加)
・視野が欠ける、カーテンがかかったように見える
・強い眼の痛み、見えにくさが続く

⚠ 夜間や暗い場所では、見えにくくなることがあります

点眼すると瞳孔が小さくなるため、夜間や暗い場所では、かえって見えにくく感じることがあります。夜間の運転や、暗い場所での作業・歩行には十分ご注意ください。点眼後、かすみが残るあいだ(添付文書では、縮瞳や調節のけいれんが回復するまで)は、運転しないでください。夜間の運転が多い方は、診察時に必ずお伝えください。

🚫 お受けいただけない場合

次の方は、点眼治療をお受けいただけない、または慎重な判断が必要です。診察で医師が判断します。年齢や持病に関する目安は、当院の判断基準です。

  • お受けいただけない方(サンピロ点眼液の添付文書で禁忌):虹彩炎(黒目の中の茶色い部分の炎症)がある方。炎症が悪化するおそれがあるためです。ピロカルピンや点眼液の成分でアレルギーを起こしたことがある方も、お受けいただけません。
  • 慎重に判断する方:網膜剥離の既往、強度近視、網膜の変性がある方。
  • 原則お勧めしない方:妊娠中の方(添付文書で、投与しないことが望ましいとされています)。
  • 診察で慎重に判断する方:気管支喘息などの持病がある方、授乳中の方、白内障や眼内レンズ挿入後の方。
  • 効果が限られることがある方:55歳を超える方、白内障が進んでいる方。

🩺 当院での治療の流れ

① 受付・問診

見えにくさの状況、持病、使用中のお薬を伺います。診療予約のうえ、ご来院ください。

② 検査

視力などの検査に加えて、広角眼底写真(網膜の広い範囲を撮る写真)で網膜剥離や網膜裂孔がないかを確認します。

③ 診察・説明

点眼治療が合うかを判断し、効果とリスクをご説明します。

④ 院内での試し点眼・処方

初回は、医院で実際に点眼して試していただきます。副作用がなく、見え方の改善を確認できた場合にだけ、点眼液を処方します。その場で点眼液を買っていただくことはありません。試し点眼のあとに、症状が出ることもあります。

点眼のポイント

  • 点眼は両眼に、1日1回です。回数を自己判断で増やさないでください。
  • 点眼後はまぶたを閉じ、目頭を軽く押さえます。
  • 他の点眼薬を使う場合は、5分以上あけます。
  • 当院では、衛生管理のため開封後30日以内の使用をお願いしています。過ぎた液は使わないでください。

📌 適応外使用について

⚠ 必ずご確認ください

サンピロ点眼液1%は、日本では緑内障の治療などを目的として承認された医薬品です。老眼への使用は承認された用法ではなく、医師の判断による適応外使用(自由診療)です。適応外使用とは、国が承認した使い方とは別の目的や方法で使うことです。

ピロカルピンは、もともと緑内障などの治療に使われてきた点眼薬です。承認された用法(1日3〜5回など)とは異なり、当院では1日1回の使い方を診察で判断します。用量・回数も添付文書と異なる、適応外の使い方です。

当院では、日本で承認されている医療用医薬品を、国内の医薬品卸売業者から仕入れています。

日本には、老眼の治療薬として承認された、ピロカルピンを含む点眼薬はありません(2026年10月時点)。海外では、前の章のとおり、米国で承認された製剤があります。米国FDAの添付文書には、網膜裂孔・網膜剥離への注意と、暗い場所や運転時の注意が記載されています。

適応外使用のため、副作用が起こった場合も、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない可能性が高く、原則として対象外とお考えください。PMDAは、適正な使用と認められない場合を対象外としています。

長く使う場合は、定期的な診察をおすすめします。ご不明な点は、当院(電話 078-431-1101)へお問い合わせください。診療時間や予約方法は、アクセス・診療時間をご覧ください。

💴 費用(自由診療)

保険適用外の自由診療です。健康保険は使えません。表示はすべて税込です。

ケース内訳合計
初回(試して処方しない)検査料・診察料 3,000円3,000円
初回(試して処方した)検査料・診察料 3,000円+点眼液 3,000円6,000円
2回目以降診察料 1,500円+点眼液 3,000円4,500円

※検査料・診察料には、広角眼底写真などの検査と、初回の院内での試し点眼が含まれます。点眼液(サンピロ点眼液1%)は、1本(約30日分)3,000円です。

👓 そのほかの老眼の対処法

老眼への対処法は、点眼のほかにもあります。生活やお仕事に合わせて選べます。

  • 老眼鏡・遠近両用メガネ:もっとも一般的な方法です。
  • 遠近両用のコンタクトレンズ:眼鏡をかけたくない方の選択肢です。
  • 多焦点眼内レンズ:白内障手術のときに、遠くから手元までピントが合いやすいレンズを選ぶ方法です。

白内障が始まっている方は、多焦点眼内レンズも選択肢になります。くわしくは、こちらの記事をご覧ください。

▶ 多焦点眼内レンズの選び方

▶ 老眼(老視)とは?原因・症状・矯正方法

❓ よくあるご質問

Q. 効果はどのくらい続きますか?

数時間程度が目安ですが、個人差があります。海外の製剤の試験では、点眼3時間後に改善がみられ、6時間後には差が小さくなっています。サンピロ1%そのものでの確かな時間は分かっていません。

Q. 点眼すると眼鏡は不要になりますか?

老眼が治るわけではないため、場面によっては眼鏡が必要です。手元の見え方を一時的に補う治療とお考えください。

Q. 夜でも見やすくなりますか?

いいえ。瞳孔が小さくなるため、夜間や暗い場所では、かえって見えにくくなることがあります。

Q. 初回に、点眼液を必ず買うのですか?

いいえ。初回は医院で試していただき、副作用がなく見え方の改善を確認できた場合にだけ処方します。処方しない場合は、検査料・診察料のみです。

Q. どんな人が受けられますか?

老眼で手元が見えにくい方が対象です。網膜の病気や持病によっては、お受けいただけないことがあります。診察で判断します。試験の対象は40〜55歳でした。60歳以上の方は、白内障の有無や暗い場所での見え方も含めて、診察で相談します。

Q. 予約は必要ですか?

診療予約のうえ、ご来院ください。予約のときに「老眼の点眼治療の相談」とお伝えください。

🩺 手元の見えにくさが気になる方へ

手元が見えにくい原因は、老眼だけとは限りません。白内障、緑内障、加齢黄斑変性などで、見えにくさが出ることもあります。急に見えにくくなったときや、片目だけ見えにくいときは、早めに受診してください。

参考資料:米国FDA Vuity添付文書、PMDA サンピロ点眼液添付文書、PMDA 医薬品副作用被害救済制度。最終更新:2026年11月4日

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断・治療に代わるものではありません。治療の適応と処方は、診察・検査のうえ医師が判断します。海外の試験結果は、当院で使用する薬剤の効果を保証するものではありません。自由診療(保険適用外)です。

監修:岸本 隼人(日本眼科学会認定 眼科専門医・きしもと眼科 院長)医師紹介

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