多焦点眼内レンズ(老眼・老視治療レンズ)

2020年7月より「多焦点眼内レンズを使用した白内障手術」を「選定療養」の枠組みで施行しております。「選定療養」では白内障手術費用は保険適応で、多焦点レンズ費用のみ自費で追加費用をお支払いいただくことで手術を受けられるようになりました。

多焦点眼内レンズ
(老眼・老視治療レンズ)について 
健康保険適応外

以前は単焦点レンズ(ピントが1か所のみに合うレンズ)が主流でしたが、2007年に多焦点眼内レンズが厚生労働省の承認を受け、新たな選択肢となりました。

単焦点レンズはピントの合う点が1か所となるために、遠方を重視した場合、近方を見る際にピントが合わなくなってしまい、老眼鏡が必要となります。 もしくは近方を重視した場合、遠くを見るときに近視用の眼鏡が必要となります。
これらの欠点を補い、できるだけ眼鏡をかけたくないというニーズにこたえるために登場したのがこの多焦点眼内レンズとなります。

多焦点眼内レンズの見え方
多焦点眼内レンズの見え方

近方と遠方の両方にピントをあわせることができます。

単焦点眼内レンズの見え方
単焦点眼内レンズの見え方

ピントを遠方に合わせた場合、近方がぼやけて見えます。

しかし、多焦点眼内レンズは、非常に期待度の高い治療である反面、どなたにでも適性があるわけではなく、すべての方が必ず満足できるレンズというわけでもありません。
このレンズは遠方・中間・近方の数カ所にピントを合わせることで、眼鏡のない生活を可能にしますが、それら特定の距離以外はピントが甘くなるため、あらゆる距離が鮮明だった若い頃の見え方が完全に再現されるわけではありません。

ハロー・グレア現象、コントラスト感度低下について

ハロー・グレア現象、コントラスト感度低下について

多焦点眼内レンズの特性として、夜間に強い光をまぶしく感じたり(グレア)、光の周辺に輪がかかって見えたり(ハロー)することがあります。 全ての方に多焦点眼内レンズの適正があるわけではないので、手術を検討されている方はまず、適性検査を受けていただいた上で、本人の生活スタイルに応じた適切なレンズを選択させていただきます。せっかく多焦点眼内レンズを希望されても乱視が非常に強い、眼底に異常がある方など様々な理由で手術できない場合もあるので、まずはご相談ください。

多焦点眼内レンズによる白内障手術が選定療養の対象となりました

多焦点眼内レンズが選定療養

白内障手術費自体は通常の白内障手術と変わらず保険適応で、多焦点眼内レンズに必要な多焦点レンズ費用(自費)を追加でお支払いいただくことで手術を受けられるようになりました。
多焦点眼内レンズを希望される患者様にとっては、以前の自由診療(全額自費)に比べ、全体的な費用負担を抑えて手術を受けていただけるようになりました。
ただし、民間の先進医療保険の特約が使用できなくなりましたのでご注意ください。

多焦点眼内レンズの選び方

当院では、白内障手術を実施する前に患者さまの日常生活をカウンセリングし、術後の見え方についてできるだけ事前にイメージしていただけるようにご説明し、眼内レンズを選定していくようにしております。

多焦点眼内レンズの選び方

きしもと眼科で使用可能な
多焦点眼内レンズ

イメージ 製品名 メーカー 種類 ピントの合う距離
 
乱視矯正 グレア・ハロー
パンオプティクス パンオプティクス選定療養対象 Alcon 3焦点
回折型
遠方 中間
近方
あり あり
vivity ビビティ選定療養対象 Alcon 波面制御型焦点深度拡張レンズ 遠方 中間 あり ほぼなし
テクニス オデッセイ選定療養対象 Johnson & Johnson 連続焦点型 遠方 中間
近方
あり 少ない
テクニス ピュアシー選定療養対象 Johnson & Johnson 焦点深度拡張型眼内レンズ 遠方 中間 あり 少ない
Fine Vision Fine Vision選定療養対象 Physiol 3焦点
アポダイズド回折型
遠方 中間
近方
あり 少ない
生活でものを見る距離感の例
遠方
3m以上 運転 テレビ 映画 散歩など
中間
50cm~1m PC 料理 お化粧 楽器演奏など
近方
50cm以下 読書 スマホ 裁縫 書き物

13焦点眼内レンズ(パンオプティクス)選定療養対象

3焦点眼内レンズ(パンオプティクス)

白内障治療向け老視矯正3焦点眼内レンズ「AcrySof® IQ PanOptix® Trifocal」(以下パンオプティクス)日本で初めて薬事承認を受けた3焦点眼内レンズであり、白内障を有し、若い頃の様な自然な見え方を追求したい患者様にとって新たな治療の選択肢となります。
また、老視と乱視を同時に矯正できる白内障治療向け3焦点眼内レンズ「AcrySof® IQ PanOptix® Trifocal トーリック」も選択可能です。
欧州で先行発売され、臨床評価が高くトップシェアとなっている3焦点の多焦点眼内レンズです。

パンオプティクスの特徴

  • 遠方(5m以遠)・中間(60cm)・近方(40cm)3点での優れた見え方を提供し、眼鏡使用頻度の大幅減少を可能に
  • 4.5mmの回析領域により、瞳孔径への依存を軽減
  • 広範囲の乱視のある白内障患者にも同様の優れた視機能を提供

単焦点、2焦点、3焦点の見え方の違い

単焦点の見え方
単焦点の見え方
2焦点の見え方
2焦点の見え方
3焦点の見え方
3焦点の見え方
パンオプティクスの特徴(その1)

PanOptix® 光の経路

従来の2焦点レンズではピントが遠方と近方にわかれるため、中間距離の見え方が弱くなってしまうことが問題でしたが、3焦点レンズでは遠方、中間距離、近方に焦点を配分することで、その弱点をカバーして、より自然な見え方になります。

パンオプティクスの特徴(その2)

40~80cmの連続した焦点距離

他社の3焦点レンズが「∞・80cm・40cm」で中間が80cmにピントのピークがあるのに対し、パンオプティクスはENLIGHTEN™ 光学テクノロジーにより、「∞・60cm・40cm」で中間が60cmにピントのピークがあるため、40~80cmの連続した焦点距離の見え方の質が良いように設計されています。

パンオプティクスの特徴(その3)

実生活での作業に適した見え方を提供

パンオプティクス挿入により、約94.8%の患者様が手術後に眼鏡をかけなくても生活できるようになったという結果が出ています。あらゆるシーンで眼鏡からの開放された快適な生活を送ることができます。

他レンズとの比較
眼内レンズの種類 遠方視力 中方視力 近方視力
パンオプティクス
2焦点(遠方型) ×
2焦点(中間型) ×
単焦点 × ×

※2焦点レンズは中間型か近方型かをお選びいただけます。

動画で見るパンオプティクス

2焦点深度拡張型眼内レンズ
 (ビビティ) 選定療養対象

ビビティ

クラレオン ビビティ(Clareon Vivity)

「クラレオン ビビティ(Clareon Vivity)」は、最新技術を取り入れた眼内レンズで、従来の多焦点レンズとは異なる新しいコンセプトで設計されています。従来の多焦点レンズに伴うデメリットを減らし、単焦点レンズの良さも持っているのが特徴です。欧米では2020年から使用されており、日本でも2023年に厚生労働省の認可を受け、「選定療養」として導入されました。また、単焦点眼内レンズの構造に近いことから従来の多焦点レンズでは不適応であった白内障以外の病気(緑内障、黄斑疾患など)を有していても使用が可能となりました。

ビビティの特徴

  • 遠くから中間距離まで、スムーズな視界を実現
  • 明るい場所でも、はっきりと見える
  • 夜間でも良好な見え方を実現
  • グレア・ハローなどの夜間光視症を抑制
  • 仕事や趣味でパソコンをよく使う方
  • 野外でスポーツを楽しみたい方
  • 夜間での車の運転を楽しみたい方
ビビティの特徴(その1)

PanOptix® 連続的な視界

クラレオン ビビティは、特殊な波面制御技術を採用しています。これにより、遠くから中間距離まで、自然でスムーズな視界を実現します。距離によって視界が急に変わることなく、連続的に見ることができるため、日常生活での快適さが向上します。

ビビティの特徴(その2)

高コントラスト視界

単焦点レンズと同等のコントラスト感度を実現しています。これは、物の輪郭がくっきりと見え、明るい場所でも暗い場所でも、はっきりとした視界を得られることを意味します。特に細かい作業や読書など、コントラストが重要な場面で力を発揮します。

ビビティの特徴(その3)

優れた夜間視界

従来の多焦点レンズの課題であったハローやグレア(光のにじみや散乱)が極めて少ないのが特徴です。これにより、夜間の運転や暗い場所での活動時も、クリアな視界を維持できます。光源を見たときのまぶしさや不快感が軽減され、夜間の安全性と快適性が向上します。

3連続焦点型眼内レンズ
(テクニス オデッセイ)  選定療養対象

テクニス オデッセイ

テクニス オデッセイ(TECNIS Odyssey)

TECNIS Odyssey™ は、既に眼鏡や工業デザイン業界などで使われ始めているFreeformテクノロジーによって光学部が最適化された新たな連続焦点 / Full Visual Range IOLです。白内障手術用多焦点眼内レンズの新たなスタンダードとして、遠方から近方(40㎝)まで連続的範囲で視力を維持します。また、ハローなどの夜間光視症を抑え、昼夜を問わず質の高い見え方を追求しました。現代の白内障患者さんが求める高品質な視力を全距離で提供します。

テクニス オデッセイの特徴

  • 遠方から近方まで連続的範囲で視力を維持
  • 残余屈折に対する高い耐性
  • 夜間光視症の軽減
  • 昼夜を問わず質の高い見え方
  • 仕事や趣味でパソコンをよく使う方
  • 夜間での車の運転を楽しみたい方
テクニス オデッセイ特徴(その1)

遠くから手元まで、
クリアな見え方

テクニスオデッセイは、遠方から近方(約40cm)までを連続的にカバーする眼内レンズです。 眼鏡の使用頻度が少なくなり、より自由な毎日を過ごせるようになります。

テクニス オデッセイ特徴(その3)

夜間のまぶしさを抑え、
昼夜問わず快適

ハローやグレアなどの夜間光視症を抑える設計により、夜の運転や暗い場所でも安心感のある視界を提供します。 昼間はもちろん、明暗差のある環境でも質の高い視力を保ちやすいのが特長です。

テクニス オデッセイ特徴(その2)

見え方の質を追求した
先進の光学設計

Freeformテクノロジーにより光学部を最適化し、高い視力性能と安定性を実現。 残りやすいわずかな度数ズレ(残余屈折)にも強く、現代のライフスタイルに合った高品質な見え方を全距離で提供します。

4焦点深度拡張型眼内レンズ
(テクニス ピュアシー)  選定療養対象

テクニス ピュアシー

テクニス ピュアシー(TECNIS PureSee)

TECNIS PureSeeはテクニスプラットフォームで初めての非回折EDOF(焦点深度拡張型)のレンズで、 従来の屈折型の多焦点レンズのようにゾーンによってパワーが異なる構造とは異なり、 パワーを連続的に変化させるOptiCurve™テクノロジーを採用しています。 これにより、遠方から近方まで焦点深度の拡張を可能にしました。 単焦点レンズ同等のコントラストと夜間光視症を実現した、新しいコンセプトの多焦点眼内レンズです。

テクニス ピュアシーの特徴

  • 遠方から中間、日常生活に必要な近方視力まで焦点深度を拡張
  • 昼夜を問わずコントラストの高い見え方を提供
  • 単焦点レンズと同等の夜間光視症プロファイル
  • 優れた遠方裸眼視力を実現
  • 仕事や趣味でパソコンをよく使う方
  • 自然でクリアな見え方を重視したい方
  • 夜間での車の運転を楽しみたい方
テクニス ピュアシー特徴(その1)

単焦点レンズに近い、
自然でクリアな見え方

テクニス ピュアシーは非回折型EDOFレンズを採用しており、従来の多焦点レンズに見られるようなゾーン構造がありません。 レンズ後面のパワーが連続的に変化することで、単焦点レンズと同等の高いコントラストを保ち、自然で違和感の少ない視界を実現します。

テクニス ピュアシー特徴(その3)

遠方から中間、
日常生活に必要な近方まで対応

OptiCurve™テクノロジーにより焦点深度を拡張し、遠方視力をしっかり確保しながら、中間距離や日常生活に必要な近方視力までカバー。 スマートフォンやパソコン操作など、日常の多くの場面で快適な見え方が期待できます。

テクニス ピュアシー特徴(その2)

夜間のハロー・グレアを抑えた
快適な視界

ゾーンを設けない設計により、夜間光視症(ハロー・グレア)を単焦点眼内レンズと同等レベルまで低減。 従来のEDOFレンズよりも夜間の見え方に優れており、暗所や夜間でも安心感のある視界を提供します。

5 3焦点眼内レンズ
(ファインビジョン) 選定療養対象

3焦点眼内レンズ(ファインビジョン)

ファインビジョン(Fine Vision)はベルギーで2011年に発売された遠方、近方に加え中間距離と3点に焦点が合うレンズです。それによりほぼ眼鏡がなしで生活ができるようになります。
※選定療養に認定されていないため自費診療のみとなります。

ファインビジョンの特徴

  • 遠方、近方だけでなく中間にもピントがあう
  • 乱視矯正も可能
  • ハロー、グレアが少ない
  • 老眼治療として最適なレンズ

単焦点眼内レンズとの比較

ファインビジョン
ファインビジョン
多焦点の場合
多焦点の場合

※ファインビジョンは遠方、近方、中間にピントがあいます。

3焦点眼内レンズによる手術後との比較

手術後
手術後
手術前
手術前
他レンズとの比較
眼内レンズの種類 遠方視力 中方視力 近方視力
ファインビジョン
2焦点(遠方型) ×
2焦点(中間型) ×
単焦点 × ×

※2焦点レンズは中間型か近方型かをお選びいただけます。

動画で見るファインビジョン

手術費について

A 選定療養対象の多焦点レンズの場合

下記の①と②を合計した金額が手術費用となります。

① 白内障手術の基本費用 保険適応

手術費
1割負担
16,000円 程度
2割負担
32,000円 程度
3割負担
48,000円 程度

② 選定療養を用いた多焦点眼内レンズの費用 自己負担

レンズの種類 診療の種類 片眼
3焦点眼内レンズ
(Alcon パンオプティクス)
自己負担 33万円(税込)
乱視用:38万円(税込)
波面制御型焦点深度拡張レンズ
(Alcon ビビティ)
自己負担 33万円(税込)
乱視用:38万円(税込)
連続焦点型眼内レンズ
(Johnson & Johnson テクニス オデッセイ)
自己負担 30万円(税込)
乱視用:35万円(税込)
焦点深度拡張型レンズ
(Johnson & Johnson テクニスピュアシー)
自己負担 30万円(税込)
乱視用:35万円(税込)
3焦点眼内レンズ
(ファインビジョン)
自己負担 30万円(税込)

多焦点眼内レンズの治療費は医療費の控除が受けられます。
年間の医療費自己負担額が10万円を超えた場合、確定申告時の医療費控除が受けられます。
詳しくは国税庁のホームページを確認ください。
国税庁のホームページはこちら >>

B 選定療養非適応の多焦点レンズの場合 自由診療

レンズの種類 診療の種類 片眼 両眼
現在取り扱いなし

多焦点眼内レンズの治療費は医療費の控除が受けられます。
年間の医療費自己負担額が10万円を超えた場合、確定申告時の医療費控除が受けられます。
詳しくは国税庁のホームページを確認ください。
国税庁のホームページはこちら >>

よくあるご質問

白内障手術をされている眼科でも多焦点眼内レンズを導入されている病院は少ないです。
総合病院でも自由診療を行っていないところでは施行されておりません。

多焦点レンズはどの眼科でも扱っていますか?
多焦点眼内レンズを導入されている病院は少ないです。

白内障手術をされている眼科でも、多焦点眼内レンズを導入されている病院は少ないです。総合病院でも自由診療を行っていないところでは施行されておりません。

多焦点レンズにすれば眼鏡が不要になりますか?
多焦点レンズにしたら必ずしも眼鏡が不要になるとは限りません。

ただしある程度のことは眼鏡なしでできるようになると考えられます。多焦点レンズにも種類があり中間~近方の見え方が異なります。その方の生活にあった多焦点レンズを相談しお選びください。必要に応じて眼鏡の作成が必要となります。

誰でも多焦点眼内レンズを受けることができますか?
まずは白内障があることですが、白内障以外に眼の病気がある方はお勧めできません。

ある程度の乱視は矯正することができますが、乱視が非常に強い方も手術後視力が不良の可能性があるため、お勧めできません。まずは検査をして適性があるかどうかを調べさせていただきます。
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手術時間はどのくらいかかりますか?難しい手術ですか?
基本的には手術自体は通常の白内障手術と変わりませんので約10分前後と考えてください。

手術時間を速くすることによるリスクを考慮しなるべく丁寧にさせていただきます。手術は他の医師に依頼することなく全て院長がさせていただきます。
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手術中、手術後に痛みはありますか?
苦痛となる痛みはほとんどありません。

手術中はなるべくリスクの低い点眼麻酔にて手術させていただきます。まれに痛みがあるという方に関してのみ、目の奥に注射をさせていただく場合もあります。手術後は多少の違和感がありますがほとんど痛みはありません。

手術後、仕事にすぐ復帰できますか?
手術後の眼帯は翌日に外しますのである程度のことはできるようになります。

但し術後の感染の可能性があるため重労働、埃っぽいところでの作業は1週間ほど避けていただくようにお願いします。

手術後すぐに見えるようになりますか?
早い方では翌日から見えるようになられる方もいます。

ただし手術が困難だった場合などは角膜に浮腫がみられるため術後見えるようになるのに数日かかる場合もあります。多焦点眼内レンズの場合慣れるのに1か月ほど要する場合もあります。

眼内レンズの寿命は?
眼内レンズの寿命は半永久的といわれています。

基本的には、よほどのトラブルがない限り入れ替える必要はありません。一生に1度の手術とお考えください。

ずばり多焦点レンズはお勧めですか?
保険のきかない高額な手術となりますが、手術後眼鏡をなるべく使用したくない方にはお勧めです。

生涯使用できるものですのでそれを安いと考えるか高いと考えるか、だと思います。手術前には本当に必要かどうかよく考えていただき、納得の上で手術を受けられるのが一番です。いつでもご相談ください。

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